免疫細胞マーカーガイド (マウス)
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マウスの免疫系の全体的な構造は、ヒトのものとよく類似しており、自然免疫と適応免疫によって構成され、これらはがんで制御されています。マウスモデルはこれまでにがん生物学の研究に大きく貢献しており、がん遺伝子の検証、がんのバイオマーカーの同定、治療効果の評価などにおいて大きな成果が得られています。ヒトと同様にマウスの免疫細胞は腫瘍の成長と抑制を調節しており、これにはサイトカイン、ケモカイン、増殖因子の複雑なシグナル伝達ネットワークが関与しています。ここではマウスの多様な免疫細胞について説明します。
マウスT細胞はCD3の発現を指標に特定することができ、さらにCD4+ヘルパーT細胞と、CD8+細胞傷害性T細胞に分類されます。T細胞が活性化されるとCD69やCD25の発現が上昇し、これらは活性化のマーカーとしてよく利用されています。CD8+細胞傷害性T細胞は、セリンプロテアーゼ (Granzyme) や孔形成細胞溶解性タンパク質 (Perforin) を分泌します。Perforinが細胞膜に形成した孔を通じてGranzymeが標的細胞に侵入し、細胞死を誘導します。一方、CD4+ヘルパーT細胞は多様なサイトカインを分泌することで免疫反応を調節します。ヒトの場合と同様に、特定の環境下で「T細胞の疲弊」がみられ、これらの細胞はPD-1、TIM-3、LAG-3をいずれかの組み合わせで発現します。しかし、これら分子はT細胞の活性化においても発現が増加します。マウスのナイーブT細胞、メモリーT細胞、エフェクターT細胞は、CD62L、IL7Ra、CD44の発現を指標に区別されます。異なるサイトカインを産生するCD4+細胞のサブセットは転写因子の発現を指標に区別することができ、抗腫瘍機能を持つTh1細胞はT-bet、腫瘍を促進する機能を持つTreg細胞はFoxP3/CD25を発現します。
マウスの樹状細胞 (DC) は、CD4+ T細胞とCD8+ T細胞に抗原を提示します。ヒトのDCと同様、マウスの細胞も形質細胞様DCと従来型DCのサブクラスに分類されます。形質細胞様DCはI型IFNを産生する細胞であり、Siglec-HとCD317を共発現するのが特徴です。一方、従来型のDCは抗原提示細胞であり、CD11cとMHCIIを発現するのが特徴です。また、クロスプレゼンテーションによってCD8+T細胞を活性化することに優れたDCは、XCR1またはCLEC9Aの発現を指標に識別することができます。
アポトーシスを起こした腫瘍細胞は、マウスの場合もヒトと同様、F4/80を発現するマクロファージによって貪食されます。また、マウスにおいてもマクロファージはM1型とM2型に分類され、M1型はCD86やCD80、iNOSを発現し、M2型はCD163やCD206、Arginaseを発現するのが特徴です。IFNγによるiNOSのmRNA誘導と機能性iNOSの発現機構はマウスでよく研究されています。
マウス自然免疫系のナチュラルキラー (NK) 細胞はがん細胞を認識して傷害します。がん細胞の認識は促進性の受容体と抑制性の受容体を介して行われ、NK細胞は宿主を害することなくがん細胞を選択的に傷害します。これらの細胞はNKG2D、NK1.1またはNKp46を発現することと、CD3の発現を発現しないことを利用して特定することができます。NK細胞は免疫調節性サイトカインの産生も行います。マウスNK細胞の恒常性維持や発生には、SH-2ドメインを持つホスファターゼSHIP1が深く関わっていると考えられています。
マウスの骨髄由来抑制細胞 (MDSCs) はCD11b、Arginaseおよび顆粒球マーカーGR1を発現しています。GR1はLy6CとLy6Gを構成成分に持つ膜タンパク質です。マウスでは、MDSCは腫瘍だけでなく骨髄、血液、脾臓、肝臓、肺にもみられます。大きく単球性MDSSC (CD11b+ Ly6G- Ly6Chi) と、多形核細胞性MDSC (CD11b+ Ly6G+ Ly6Clo) のグループに分類され、がんの大半では主に後者がみられます。しかし、末梢単核細胞と好中球を明確に区別する方法は確立されておらず、現在精力的に研究が行われています。
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本パスウェイ図の作成にご協力くださいました、マサチューセッツ・メディカル・スクール大学のKate Fitzgerald博士、オレゴン健康科学大学のCourtney Betts博士、マサチューセッツ総合病院がんセンターおよびハーバード大学メディカルスクールのShadmehr (Shawn) Demehri博士に深く感謝いたします。
作成日:2019年3月