タンパク質のアセチル化
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リジンのアセチル化は可逆的な翻訳後修飾で、タンパク質の機能や、クロマチン構造、遺伝子発現の制御において重要な働きを担っています。転写共役因子の多くがアセチラーゼ活性を有する一方、転写補助抑制因子は脱アセチル化に関与します。アセチル化複合体 (CBP/p300、PCAFなど)、または脱アセチル化複合体 (Sin3、NuRD、NcoR、SMRTなど) は、各種シグナル伝達経路に応答して、DNAに結合した転写因子 (TF) へリクルートされます。ヒストンアセチル基転移酵素 (HAT) によるヒストンの高アセチル化は、転写活性化に関係しています。一方、ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) によるヒストンの脱アセチル化は、転写抑制に関係しています。ヒストンのアセチル化は、クロマチンの高次構造をリモデリングしてヒストン-DNAの相互作用を弱め、転写活性化複合体が結合部位にアクセスしやすくすることで転写を促進します。この転写活性化複合体には、アセチル化リジンに結合するブロモドメインを有するタンパク質が含まれます。ヒストンの脱アセチル化は、アセチル化とは逆の機構で転写を抑制します。すなわち、クロマチンを緻密に集合させ、ブロモドメインを有する転写活性化複合体を排除します。ヒストンの低アセチル化は、転写抑制に働くヘテロクロマチンの特徴です。数多くの非ヒストンタンパク質も部位特異的にアセチル化されて、その活性、局在、特異的相互作用、および安定性/分解の制御に関与していることが明らかになっています。特に、近年の質量分析技術の発展によって、全プロテオームのアセチル化部位の大部分で、高解像度でのマッピングが可能となりました。これらの研究によって、「アセチローム」には約3600ものタンパク質におよそ1750種のアセチル化部位が含まれることが明らかになり、アセチル化が自然界で最も多く見られる化学的修飾の1つであることが示唆されています。さらに、この修飾は、クロマチンリモデリングや、細胞周期、スプライシング、核輸送、ミトコンドリアバイオロジー、およびアクチン核形成など、多様な生物学的プロセスにおけるタンパク質の活性に影響し得ることが明らかになりました。個体レベルでは、アセチル化は、免疫系、概日リズム、および記憶形成において重要な役割を担っています。タンパク質のアセチル化は、多様な疾患に対する医薬品のデザインにおいて、有望な標的となりつつあります。
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この図について、ご貢献くださったハーバード大学医学大学院 (マサチューセッツ州、ボストン) のRaul Mostoslavsky教授に感謝いたします。
作成日:2002年11月
改訂日:2012年9月