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SimpleChIP® Plus Chromatin IPプロトコール (ソニケーション法/磁気ビーズ) (ChIP Magnetic)

次の製品の専用プロトコールです:SimpleChIP® Plus Sonication Chromatin IP Kit #56383

必要な試薬

キットに含まれる試薬:

  1. Glycine Solution (10X) #7005
  2. ChIP Sonication Cell Lysis Buffer (2X) #96529
  3. ChIP Sonication Nuclear Lysis Buffer #28778
  4. ChIP Buffer (10X) #7008
  5. ChIP Elution Buffer (2X) #7009
  6. 5 M NaCl #7010
  7. ChIP-Grade Protein G Magnetic Beads #9006
  8. DNA Binding Buffer #10007
  9. DNA Wash Buffer #10008 (4倍量のエタノールを使用前に加えてください)
  10. DNA Elution Buffer #10009
  11. DNA Purification Columns #10010
  12. Protease Inhibitor Cocktail (200X) #7012
  13. RNase A (10 mg/ml) #7013
  14. Proteinase K (20 mg/ml) #10012
  15. SimpleChIP® Human RPL30 Exon 3 Primers 1 #7014
  16. SimpleChIP® Mouse RPL30 Intron 2 Primers 1 #7015
  17. Histone H3 (D2B12) Rabbit Monoclonal Antibody (ChIP Formulated) #4620
  18. Normal Rabbit IgG #2729

キットに含まれない試薬:

  1. Magnetic Separation Rack #14654
  2. Phosphate Buffered Saline (PBS-1X) pH7.2 (Sterile) #9872
  3. Nuclease-free Water #12931
  4. SimpleChIP® Universal qPCR Master Mix #88989
  5. エタノール (96-100%)
  6. ホルムアルデヒド (37%ストック溶液)
! この ! マークは、免疫沈降を行う回数 (IPプレップ数) に応じて量を変更する重要ステップであることを意味します。免疫沈降1回分は、4 x 10‭6個の組織培養細胞、または25 mgの破砕した組織に相当します。
!! この !! マークは、操作を進める前にバッファーを希釈する重要なステップであることを意味します。
SAFE STOP これは、実験操作を中断する必要がある場合に、プロトコールを安全に中断できるポイントを示します。

I. 組織のクロスリンクおよびサンプル調製

組織を採取する際、脂肪や壊死組織などの不要な部分を取り除いてください。組織サンプルは、すぐに処理してクロスリンクするか、後で処理するためにドライアイスで凍結してください。最適なChIP結果を得るため、免疫沈降1回につき25 mgの組織を使用します。クロマチンの断片化および濃度の解析 (セクションIV) とインプットクロマチンとして使用するために、追加で5 mgの組織を用意してください。クロマチン収量は、組織の種類により異なるため、一部の組織では免疫沈降1回につき25 mgを超える量が必要となる場合があります。

クロマチン調製1回に必要な量として、組織100-150 mgを想定しています。推奨の組織量を用いることにより、いくつかの組織タイプでクロマチン収量が低くなる問題を回避し、ソニケーション処理による効率的なクロマチンの断片化が可能になります。組織ごとに予測されるクロマチン収量については、Appendix Aを参照してください。

実験開始前の準備:

(!) すべてのバッファーの量は、クロマチン調製の数に比例して増やす必要があります。

  • 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012を取り出し、室温に戻してください。PICが完全に解凍されていることを必ず確認してください。
  • クロマチン調製1回につき、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) 3 mL + 200X PIC 15 µLの混合液を調製し、氷上で保持してください。
  • クロマチン調製1回につき、1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer 1 mL (2X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer #96529 0.5 mL + 水0.5 mL) + 200X PIC 5 µLの混合液を調製し、氷上で保持してください。
  • クロマチン調製1回につき、37%ホルムアルデヒド28 µLを用意し、室温で保持してください。代わりに、メタノールを含まない16%ホルムアルデヒド62.5 µLを使用することもできます。メーカーが示す使用期限内の新しいホルムアルデヒドを使用してください。
  1. 新鮮組織または凍結組織サンプルを計量してください。クロマチン調製1回につき、100-150 mgの組織を使用してください。
  2. 組織サンプルをペトリディッシュに置き、清潔な解剖用メスまたは剃刀の刃を用いて、1-2mm角になるまで細かく切り刻んでください。ディッシュは氷上で保持してください。タンパク質分解を防ぐため、組織をよく冷やす必要があります。
  3. 細かく刻んだ組織を15 mLコニカルチューブに入れ、クロマチン調製1回につき氷冷したPBS + PICの混合液1 mLを加えてください。
  4. タンパク質をDNAにクロスリンクするため、PBS + PIC混合液1 mLに対し、37%ホルムアルデヒド28 µLまたは16%メタノールフリーホルムアルデヒド62.5 µLを加え、室温で少なくとも10分間保持してください。ホルムアルデヒドの終濃度は1%です。ヒストン修飾に対するChIPでは10分間の固定で十分ですが、転写因子に対するChIPでは10-30分間固定することを推奨します。また、転写コファクターのChIPでは、30分間固定することを推奨します (Appendix Bの図7を参照してください)。
  5. PBS + PICの混合液1 mLに対し、10X Glycine #7005 100 µLを加えてクロスリンクを停止させてください。混合して氷上で5分間インキュベートしてください。
  6. 組織を、1,200 x gで5分間、4°Cで遠心分離してください。
  7. 上清を取り除き、クロマチン調製1回につき氷冷したPBS + PICの混合液1 mLで洗浄してください。
  8. 1,200 x gで5分間、4°Cで遠心分離してください。
  9. ステップ7-8をもう一度繰り返してください。
  10. 上清を取り除き、クロマチン調製1回につき1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer + PICの混合液1 mLを入れ、組織を再懸濁してください。(SAFE STOP) 破砕する前のサンプルは、-80°Cで最長3か月間保存できます。
  11. 先端を切ったピペットチップを用いて、組織懸濁液をDounce Homogenizerに入れてください。
  12. 微調整用ペストル (タイプA) を用いて、20回または塊が見えなくなるまでストロークし、組織を破砕してください。
  13. 細胞懸濁液を1.5 mLチューブに移し、直ちに細胞核の調製とクロマチンの断片化に進んでください (セクションIII)。

II. 培養細胞のクロスリンクおよびサンプル調製

最適なChIPの結果を得るため、免疫沈降1回につき約4 x 106個の細胞を使用します。HCT 116細胞では、増殖培地20 mLで90%コンフルエントに培養した15 cm培養ディッシュ1枚分の1/3量に相当します。クロマチンの断片化および濃度の解析、およびインプットクロマチンとして使用するため、追加で1 x 106個の細胞を調製してください (セクションIV)。

クロマチン調製1回に必要な量として、1 x 107-2 x 107個の細胞を想定しています。推奨の細胞数を用いることで、いくつかの細胞タイプでクロマチン収量が低くなる問題を回避し、ソニケーション処理による効率的なクロマチンの断片化が可能となります。

実験開始前の準備:

(!) すべてのバッファーの量は、使用する15 cmの組織培養ディッシュ (または20 mLの浮遊細胞) の数に比例して増やす必要があります。

  • 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012を取り出し、室温に戻してください。PICが完全に解凍されていることを必ず確認してください。
  • 15 cmディッシュ1枚 (または浮遊細胞20 mL) につき、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) 2 mL + 200X PIC 10 µLの混合液を調製して、氷上で保持してください。
  • 15 cmディッシュ1枚 (または浮遊細胞20 mL) につき、PBS 40 mLを調製し、氷上で保持してください。
  • 15 cmディッシュ1枚 (または20 mLの浮遊細胞) につき、37%ホルムアルデヒド540 µLを調製し、室温で保持してください。あるいは、16%メタノールフリーホルムアルデヒド1.25 mLを使用することもできます。メーカーが示す使用期限内の新しいホルムアルデヒドを使用してください。
  • クロマチン調製1回につき、1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer 1 mL (2X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer #96529 0.5 mL + 水0.5 mL) + 200X PIC 5 µLの混合液を調製してください。
  1. タンパク質をDNAにクロスリンクするために、20 mLの培地を含む15 cmの培養ディッシュ (あるいは浮遊細胞20 mL) に、37%ホルムアルデヒド540 µL、または16%メタノールフリーホルムアルデヒド1.25 mLを加えてください。懸濁細胞を適切にクロスリンクするため、処理時の細胞密度は0.5 x 106細胞/mL以下としてください。手早くディッシュを傾けて混合し、室温で10分間インキュベートしてください。最終的なホルムアルデヒド濃度は1%です。ホルムアルデヒドを加えると、培地の色が変化する場合があります。
  2. 10X Glycine 2 mLを、培地が20 mL入ったそれぞれの15 cmディッシュに加え、手早く回して混合し、室温で5分間インキュベートしてください。Glycineを加えると、培地の色が変化する場合があります。
  3. 浮遊細胞の場合:
    1. 50 mLコニカルチューブに移し、1,000 x gで5分間、4°Cで遠心分離し、20 mLの氷冷したPBSでペレットを2回洗浄してください。PBSを取り除き、ステップ3bへ進んでください。あるいは、細胞ペレットをドライアイス等で凍結し、使用するまで-80°Cで保存してください。
    2. クロマチン調製1回につき、細胞数が最大2 x 107個/mLとなるように、1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer + PICの混合液で再懸濁し、速やかに細胞核の調製とクロマチンの断片化 (セクションIII) に進んでください。(SAFE STOP) あるいは、サンプルを-80°Cで最長3か月間保存できます。
  4. 接着細胞の場合:
    1. 培地を除去し、氷冷した1X PBS 20 mLで2回洗浄してください。毎回、洗浄液を完全に取り除いてください。
    2. 氷冷したPBS + PICの混合液2 mLを、各15 cmディッシュに加えてください。細胞を掻き取り、冷たいバッファーに懸濁してください。すべてのディッシュから集めた細胞をコニカルチューブ (15 mL) 1本に集めてください。
    3. 細胞を1,000 x gで5分間、4°Cで遠心分離してください。PBSを取り除き、ステップ4dに進んでください。あるいは、細胞ペレットをドライアイス等で凍結し、使用するまで-80°Cで保存してください。
    4. クロマチン調製1回につき、細胞数が最大2 x 107個/mLとなるように、1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer + PICの混合液で再懸濁し、速やかに細胞核の調製とクロマチンの断片化 (セクションIII) に進んでください。(SAFE STOP) あるいは、サンプルを-80°Cで最長3か月間保存できます。

III. 細胞核の調製とクロマチンの断片化

クロマチン調製1回分として、100-150 mgの組織または1 x 107-2 x 107個の培養細胞を想定しています。複数回分のクロマチン調製を同時に行うことは可能ですが、バッファー量をそれに合わせてスケールアップし、ソニケーション処理は1 mLのサンプルスケールで行ってください。ソニケーション時の細胞数と液量は、得られるクロマチン断片のサイズに影響します。

実験開始前の準備:

(!) すべてのバッファーの量は、クロマチン調製の数に比例して増やす必要があります。

  • 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012を取り出し、室温に戻してください。使用前に、完全に解凍されていることを必ず確認してください。
  • クロマチン調製1回につき、1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer 1 mL (2X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer #96529 0.5 mL + 水0.5 mL) + 200X PIC 5 µLの混合液を調製してください。
  • クロマチン調製1回につき、ChIP Sonication Nuclear Lysis Buffer #28778 1 mL + 200X PIC 5 µLの混合液を調製してください。
  1. セクションIまたはセクションIIで調製した1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer + PICの混合液で懸濁した細胞サンプルを、氷上で10分間インキュベートしてください。
  2. 5,000 x gで5分間、4°Cで遠心分離して細胞を沈殿させてください。上清を取り除き、クロマチン調製1回につき氷冷した1X ChIP Sonication Cell Lysis Buffer + PICの混合液1 mLにペレットを再懸濁してください。
  3. 細胞懸濁液を氷上で5分間インキュベートしてください。細胞を5,000 x gで5分間、4°Cで遠心分離して細胞を沈殿させてください。クロスリンクされた細胞は、ソニケートしない限り完全に溶解しない場合があること注意してください。
  4. 細胞を、クロマチン調製1回につき氷冷したChIP Sonication Nuclear Lysis Buffer #28778 ​+ PIC混合液の1 mLで懸濁し、氷上で10分間インキュベートしてください。細胞懸濁液1 mLをソニケーションに適したサイズのチューブに移してください。クロスリンクした細胞および核は、ソニケートしない限り完全に溶解しないことに注意してください。
  5. ソニケーションによるクロマチンの断片化:ソニケーション処理の条件は、ソニケーターごとに出力設定と処理時間を試験して決定する必要があります。最適なソニケーション処理の条件であれば、クロマチン断片の60-90%が1 kb未満のサイズとなります。クロスリンクの時間が長いと、1 kb未満の断片の割合が30-60%に減少する可能性があります (Appendix Bの図7、Appendix Cの図8を参照してください)。過剰なソニケーション処理は、クロマチンが苛酷な処理を受けてシグナルが減少または消失する原因となる場合があります。推奨されるサイズのクロマチン断片を得るために必要な、最小回数のソニケーションを行うようにしてください。
    • 各ソニケーションサンプルには、ChIP Sonication Nuclear Lysis Buffer 1 mLあたり、100-150 mgの組織または1 x 107-2 x 107個の細胞を使用することを推奨します。組織量が多かったり、細胞密度が高かったりすると、クロマチンの断片化の効率が低下する可能性があります。
    • Branson Digital Sonifier D250 probe sonicatorを1/8-inch Micro Tipと共に使用し、50%の出力設定で1秒間ON + 1秒間OFFのサイクルを計8分間 (ソニケーション処理は4分間) 行うと、最適なクロマチンの断片化が起こり、クロマチン免疫沈降の効率も良くなります。
    • ソニケート中は、クロマチンサンプルの入ったチューブを氷上に置き、常に冷やしてください。ソニケーターのプローブが、チューブの底や側面に触れないようにしてください。ソニケート中にクロマチンサンプルが泡立った場合は、一旦停止し、チューブの位置を調整してください。
  6. 微量遠心分離機を用いて、21,000 x gで10分間、4°Cで遠心分離して、ライセートを清澄化してください。
  7. 上清を新しいチューブに移してください。(SAFE STOP) これが、クロスリンクしたクロマチン調製液です。使用するまで-80°Cで保存してください。50 µLのクロマチン調製液を、クロマチンの断片化および濃度の解析 (セクションIV) に使用します。

IV. クロマチンの断片化および濃度の解析 (推奨ステップ)

  1. クロマチンサンプル 50 µL (セクションIIIのステップ7) に、Nuclease-free water 100 µL、5 M NaCl #7010 6 µL、およびRNase A #7013 2 µLを加えてください。ボルテックスで混合し、37°Cで30分間インキュベートしてください。
  2. RNase Aで処理した各サンプルに、Proteinase K #10012 2 µLを加えてください。ボルテックスで混合し、65°Cで2時間インキュベートしてください。
  3. セクションVIIを参照して、DNA精製用スピンカラムを用いてサンプルのDNAを精製してください。(SAFE STOP) DNAは、-20°Cで最長6か月間保存できます。
  4. DNA精製後、各サンプル10 µLを1%アガロースゲルで電気泳動し、DNA断片のサイズを測定してください。DNAはスメア状に、200 bpから数kbの範囲で観察されることが予想されます (Appendix Cの図7を参照してください)。全DNA断片の約60-90%が、1 kb未満となっているはずです。ソニケーション条件の最適化については、Appendix Bを参照してください。
  5. 分光光度計を用いてDNA濃度を測定してください。理想的なDNA濃度は、50-200 µg/mLです。

V. クロマチン免疫沈降

最適なChIPの結果を得るために、免疫沈降1回につき約5-10 µgのソニケーション処理されたクロスリンククロマチン (セクションIVに記載) を使用してください。これは、破砕した組織25 mgまたは4 x 106個の組織培養細胞から調製された免疫沈降用サンプル100 µLに相当します。一般的には、抗体を加える前にクロマチンサンプル100 µLを1X ChIP Buffer 400 µLで希釈しますが、免疫沈降1回につき100 µL以上のクロマチンが必要な場合は、1X ChIP Bufferを用いてクロマチンサンプルを1:4に希釈してください。Protein G Magnetic Beadsを追加で加える必要はありませんが、ビーズとのインキュベーション時間の延長は有効です。

実験開始前の準備:

(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降を行う回数に比例して増やす必要があります。

  • 200X Protease Inhibitor Cocktail (PIC) #7012を取り出し、室温に戻してください。PICが完全に解凍されていることを必ず確認してください。
  • 10X ChIP Buffer #7008を取り出して室温に戻し、SDSが完全に溶解していることを必ず確認してください。
  • 断片化したクロマチン調製液 (セクションIIIのステップ7) を溶かして、氷上で保持してください。
  • Low salt washの調製:免疫沈降1回につき、1X ChIP Buffer 3 mL (10X ChIP Buffer #7008 300 µL + 水2.7 mL) を調製し、氷上で保持してください。
  • High salt washの調製:免疫沈降1回につき、1X ChIP Buffer 1 mL (10X ChIP Buffer #7008 100 µL + 水900 µL) + 5 M NaCl #7010 70 µLの混合液を調製し、氷上で保持してください。
  1. 1本のチューブに、ソニケーション処理したクロマチンの希釈用として、免疫沈降の予定回数分に十分な1X ChIP Buffer + PIC混合液を用意してください。免疫沈降1回につき計500 µLとなるように、クロマチンサンプル (DNA 5-10 µg) を1X ChIP Buffer + PIC混合液で希釈してください。効率的な免疫沈降のために、クロマチンを1X ChIP Bufferで1:4以上の希釈率で希釈してください。調製した混合液のチューブは、氷上で保持してください。免疫沈降のサンプル数を決定する時には、ポジティブコントロールのHistone H3 (D2B12) Rabbit Monoclonal Antibody #4620、およびネガティブコントロールのNormal Rabbit IgG Antibody #2729のサンプルを数に入れてください。
  2. 希釈したクロマチン10 µLを微量遠心分離用チューブに移してください。これが、2%インプットサンプルです。使用するまで-20°Cで保存してください (セクションVIのステップ1で使用します)。
  3. 免疫沈降1回につき、500 µLの希釈したクロマチンを1.5 mL微量遠心チューブに移し、免疫沈降用抗体を加えてください。必要な抗体量は免疫沈降ごとに異なるため、メーカーの推奨に従って使用してください。ポジティブコントロールのHistone H3 (D2B12) Rabbit Monoclonal Antibody#2729については、免疫沈降サンプルに1-2 µL (1-2 µg) を加えてください。免疫沈降サンプルを、ローテーターを用いて4°Cで4時間から一晩インキュベートしてください。
  4. 注意:Cell Signaling Technologyのほとんどの抗体は、免疫沈降1回につき1-2 µgを使用することで適切に機能します。濃度の異なる複数の抗体がある場合は、ネガティブコントロールとなるNormal Rabbit IgG #2729の濃度を最も高濃度の抗体に合わせて使用することをお勧めします。

  5. ChIP-Grade Protein G Magnetic Beads #9006を軽くボルテックスし、再懸濁してください。その後、すぐにProtein G Magnetic Beads 30 µLを各免疫沈降反応液に加え、ローテーターを用いて4°Cで2時間インキュベートしてください。あるいは、Protein G Magnetic Beadsをステップ3で加えることもできますが、バックグラウンドが高くなる可能性があります。
  6. 各チューブを磁気分離ラックにセットし、各免疫沈降サンプルのProtein G Magnetic Beadsを沈殿させてください。溶液が澄むまで1-2分間待ち、上清を慎重に取り除いてください。
  7. Protein G Magnetic BeadsのペレットにLow salt wash 1 mLを加えて洗浄し、ローテーターを用いて5分間、4°Cでインキュベートします。ステップ5-6をさらに2回繰り返し、Low salt washで合計3回洗浄してください。
  8. High salt wash 1 mLをビーズに加え、ローテーターを用いて4°Cで5分間インキュベートしてください。
  9. 各チューブを磁気分離ラックにセットし、各免疫沈降サンプルのProtein G Magnetic Beadsを沈殿させてください。溶液が澄むまで1-2分間待ち、上清を慎重に取り除いてください。速やかにセクションVIに進んでください。

VI. 抗体/Protein G Magnetic Beadsからのクロマチンの溶出および脱クロスリンク

実験開始前の準備:

(!) すべてのバッファーの量は、免疫沈降を行う回数に比例して増やす必要があります。

  • 2X ChIP Elution Buffer #7009を取り出して、37°Cのウォーターバスで温め、SDSが完全に溶解していることを確認してください。
  • ウォーターバスまたはサーモミキサーを65°Cに設定してください。
  • 各免疫沈降サンプルおよび2%インプットサンプル用に、1サンプルにつき1X ChIP Elution Buffer 150 µL (2X ChIP Elution Buffer #7009 75 µL+ 水75 µL) を用意してください。
  1. 1X ChIP Elution Buffer 150 µLを、2%インプットサンプル入りのチューブに加え、ステップ7で使用するまで室温で保持してください。
  2. 1X ChIP Elution Buffer 150 µLを、各免疫沈降サンプルに加えてください。
  3. 軽くボルテックス (1,200 rpm) しながら、65°Cで30分間処理し、抗体/Protein G Magnetic Beads複合体からクロマチンを溶出してください。本ステップには、サーモミキサーの使用を推奨します。しかし、65°Cのウォーターバス上で頻繁に混合する方法も可能です。ローテーターを用いて室温で溶出することもできますが、完全に溶出されない可能性があります。
  4. サンプルを、10,000 x gで10秒間遠心し、微量遠心分離用チューブの蓋に蒸発して付着したサンプルを除去してください。
  5. 各チューブをMagnetic Separation Rackにセットし、溶液が澄むまで1-2分間待ち、Protein G Magnetic Beadsを磁気分離してください。
  6. 溶出されたクロマチンを含む上清を、慎重に新しいチューブに移してください。
  7. ステップ1で調製した2%インプットサンプルを含むすべてのチューブに、5 M NaCl #7010 6 µLおよびProteinase K #10012 2 µLを加えて脱クロスリンクして、65°Cで2時間インキュベートしてください。インキュベーションは一晩まで延長することができます。
  8. 速やかにセクションVIIに進んでください。(SAFE STOP) この状態で、サンプルは-20°Cで最長4日間保存できます。ただし、沈殿物の形成を防ぐために、DNA Binding Buffer #10007を加える前に (セクションVIIのステップ1)、必ずサンプルを室温に戻してください。

VII. スピンカラムを用いたDNAの精製

実験開始前の準備:

  • (!!) 使用前に、エタノール (96-100%) 24 mLをDNA Wash Buffer #10008​に加えてください。このステップは、DNA精製の最初のセッティングの前に1度だけ実施してください。
  • セクションVIで得られたDNAサンプルそれぞれに対して、DNA精製用スピンカラムとコレクションチューブ#10010を1つずつ用意してください。
  1. DNA Binding Buffer #10007 750 µLを各DNAサンプルに加え、軽くボルテックスしてください。
    • 1サンプルにつき、5倍量のDNA Binding Bufferを使用します。
  2. ステップ1のDNAサンプル450 µLをそれぞれ、コレクションチューブにセットした各DNAスピンカラムに移してください。
  3. 14,000 rpmで30秒間遠心分離してください。
  4. コレクションチューブから各スピンカラムを取り外し、液体を廃棄してください。各スピンカラムをコレクションチューブに再度セットしてください。
  5. ステップ1の残りのサンプル450 µLを、コレクションチューブにセットした各スピンカラムに移してください。ステップ3-4を繰り返してください。
  6. DNA Wash Buffer #10008 750 µLをコレクションチューブにセットした各スピンカラムに加えてください。
  7. 14,000 rpmで30秒間遠心分離してください。
  8. コレクションチューブから各スピンカラムを取り外し、液体を廃棄してください。各スピンカラムをコレクションチューブに再度セットしてください。
  9. 14,000 rpmで30秒間遠心分離してください。
  10. コレクションチューブと液体を廃棄してください。スピンカラムは廃棄しないでください。
  11. 各DNAスピンカラムを新しい1.5 mLの微量遠心分離用チューブにセットし、DNA Elution Buffer #10009 50 µLを加えてください。
  12. 14,000 rpmで30秒間遠心分離し、DNAを溶出してください。
  13. 各DNAスピンカラムを取り外し、廃棄してください。得られた溶出液が精製されたDNAです。(SAFE STOP) サンプルは、-20°Cで最長6か月間保存できます。

VIII. PCRによるDNAの定量

推奨事項:

  • コンタミネーションを防ぐため、フィルターチップ付きピペットを使用してください。
  • キットに含まれているコントロールプライマーは、ヒトとマウスのRPL30遺伝子 (#7015) に特異的であり、通常のPCRまたは定量的リアルタイムPCRのどちらにも使用することができます。他の生物種でChIPを実施する場合は、その種で使用可能な適切なプライマーを設計し、最適なPCR条件を決定してください。
  • 非特異的なPCR産物の増幅を防ぐため、ホットスタート用Taqポリメラーゼの使用を推奨します。
  • プライマーの設定は非常に重要です。以下の条件に近いプライマーを設計してください:
    プライマーの長さ: 24塩基
    至適Tm値: 60°C
    至適GC含有量: 50%
    アンプリコンのサイズ: 150-200 bp (通常のPCR)
      80-160 bp (定量的リアルタイムPCR)

通常のPCR:

  1. 使用するPCR装置のモデルに対応するPCRチューブあるいはPCRプレートに、適切なサンプル番号を記載してください。2%インプットサンプル、ポジティブコントロールのHistone H3サンプル、ネガティブコントロールのNormal Rabbit IgGサンプル、およびDNAコンタミネーションに対するコントロールとしてDNAなしのチューブも用意してください。
  2. 各チューブにDNAサンプル2 µLを分注してください。
  3. マスターミックスを下記の通りに調製してください。分量不足を防ぐために、実際のチューブ数に2本追加した量を調製してください。各反応用チューブにマスターミックス18 µLを加えてください。
    試薬 PCR反応1回の分量 (18 µL)
    Nuclease-free H2O 12.5 µL
    10X PCR Buffer 2.0 µL
    4 mM dNTP Mix 1.0 µL
    5 µM RPL30 プライマー 2.0 µL
    Taq DNA Polymerase 0.5 µL
  4. PCR反応を以下のプログラムで開始してください:
    1. 初期変性 95°C 5分間
    2. 変性 95°C 30秒間
    3. アニーリング 62°C 30秒間
    4. 伸長反応 72°C 30秒間
    5. ステップbからdを繰り返し、計34サイクル反応させてください。
    6. 最終伸長反応 72°C 5分間
  5. 反応終了後、解析用に各PCR産物10 µLを回収し、100 bp DNAマーカーと共に、2%アガロースゲルまたは10%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行ってください。Human RPL30 #7015 のPCR産物の予想サイズは161 bpです。

定量的リアルタイムPCR:

  1. 使用するPCR装置のモデルに対応するPCRチューブあるいはPCRプレートに、適切なサンプル番号を記載してください。PCR反応には、ポジティブコントロールのHistone H3サンプル、ネガティブコントロールのNormal Rabbit IgGサンプル、DNAコンタミネーション確認用のコントロールとしてDNAを含まないチューブ、および標準曲線の作成と増幅効率の決定のため2%インプットクロマチンDNAの段階希釈サンプル (希釈なし、1:5、1:25、1:125) を用意してください。
  2. 各PCRチューブまたはPCRプレートの各ウェルに、DNAサンプル 2 µLを分注してください。
  3. 下記の通り、マスターミックスを調製してください。PCR反応1サンプルにつき、2-3回分の複製サンプルを用意してください。体積の減少を補うため、十分な試薬を加えてください。各PCR反応用チューブまたは各ウェルにマスターミックス18 µLを加えてください。(SAFE STOP) 必要に応じて、遮光のためアルミホイルでプレートを覆い、4°Cの場合は最長4時間、また-20°Cの場合は一晩、装置が使用できるようになるまで保存してください。
    試薬 PCR反応1回の分量 (18 µL)
    Nuclease-free H2O 6 µL
    5 µM RPL30 プライマー 2 µL
    SimpleChIP® Universal qPCR Master Mix #88989 10 µL
  4. PCR反応を以下のプログラムで開始してください:
    a. 初期変性 95°C 3分間
    b. 変性 95°C 15秒間
    c. アニーリングおよび伸長: 60°C 60秒間
    d. ステップbからdを繰り返し、計40サイクル反応させてください。  
  5. リアルタイムPCR装置に付属のソフトウェアを使用して、定量結果を解析してください。代替法として、Percent Input法により下記の公式を用いて、免疫沈降の効率を算出することもできます。この方法では、各免疫沈降で回収されたシグナルを、インプットクロマチン総量に対する割合 (%) で算出します。

    Percent Input = 2% x 2(C[T] 2% Input Sample - C[T] IP Sample)
    C[T] = CT = Average threshold cycle of PCR reaction

IX. NG-seqライブラリーの調製

本キットを用いて調製したDNAサンプルは、直接ChIP-seqに使用できます。NG-シーケンシングDNAライブラリーの構築の際は、使用予定のシーケンスプラットフォームと互換性のあるDNAライブラリー調製プロトコールまたはキットを使用して行ってください。Illumina プラットフォームでのシーケンシングには、Multiplex Oligos for Illumina® (Single Index Primers) (ChIP-seq, CUT®RUN) #29580、またはMultiplex Oligos for Illumina® (Dual Index Primers) (ChIP-seq, CUT&RUN) #47538を推奨します。

推奨事項:

  • 転写因子または転写コファクターのChIP-seqでは、ChIPで濃縮したDNAを少なくとも5 ng使用し、10サイクルのPCRでアダプター配列が結合したDNAを増幅してください。
  • ヒストン全体やヒストン修飾、またはインプットサンプルについては、ChIPで濃縮したDNA 50 ngを使用するところから始め、6サイクルのPCRでアダプター配列が結合したDNAを増幅してください。
  • どのような種類の標的に対しても、ChIPで濃縮したDNAのライブラリー構築でサイズセレクションを行わずに、アダプター配列が結合したDNAをクリーンアップしてください。
  • DNAライブラリー構築後、Agilent High Sensitivity DNA Kit (Agilent Technologies, Cat# G2938-90322)、または2%アガロースTAEゲルを用いて50-100 ngのDNAを電気泳動し、アダプターダイマー (約140 bp) がDNAライブラリーに存在するかどうかを確認してください。アダプターダイマーが存在する場合、PCR増幅産物のクリーンアップを繰り返してください。
  • ライブラリーの品質は、既知のポジティブおよびネガティブコントロール用プライマーセットを用いたリアルタイムPCRにより確認することもできます。ChIPで濃縮したDNAのオリジナルのqPCR解析で見られたのと同様に、ポジティブプライマーペアはネガティブプライマーと比較して同じ高さのシグナルを示すはずです。
  • 最終的なクリーンアップおよび品質チェックの後、最終精製ライブラリーサンプルを2-10 nMに調製してハイスループットシーケンシングに使用してください。

Appendix A:予想されるクロマチン収量

組織サンプルからクロスリンククロマチンを調製する場合、組織の種類によってクロマチン収量が大きく異なります。下の表には、2 x 107のHCT 116細胞の場合と比較して、100 mgの組織から得られる予想クロマチン収量と、予想DNA濃度を示しています。これらは、プロトコールのセクションIVに記載した方法で決定しています。最適なChIPの結果を得るには、Multiplex Oligos for Illumina® (Single Index Primers) (ChIP-seq, CUT&RUN) #29580、またはMultiplex Oligos for Illumina® (Dual Index Primers) (ChIP-seq, CUT&RUN) #47538を推奨します。

組織/細胞 クロマチンの総収量 予想されるDNA濃度
肝臓 50 µg/組織100 mg 150 µg/mL
25µg/組織100 mg 50 µg/mL
心臓 105 µg/組織100 mg 20 µg/mL
HCT 116 細胞2 x 107個あたり100-150 µg 100-150 µg/mL

APPENDIX B:ホルムアルデヒドによる固定条件の最適化

転写因子や転写コファクターは、ヒストンタンパク質よりも緩やかにクロマチンDNAに結合します。そのため、ソニケーション処理中にクロマチンから分離する傾向にあります。特に、組織サンプルの場合、固定時間を長くすることで、ChIPアッセイにおいて転写因子や転写コファクターが補足される量を増やすことができます。図7に示すように、固定時間を10分間から30分間に延ばすと、クロマチン断片のサイズが小さくなることがありますが (左パネル)、転写コファクターであるRING1BやSUZ12の濃縮効率は向上することが、心臓組織のChIP-qPCRで示されています (中央および右パネル)。

一般的に、ヒストン修飾のChIPでは、細胞でも組織でも10分間の固定で十分ですが、転写因子や転写コファクターでは、特に組織サンプルの場合、最大30分間まで固定時間を追加する必要がある場合があります。

FIGURE 7. Mouse heart (H), brain (B), and liver (L) were cross-linked for 10 min or 30 min.

図7. マウスの心臓組織 (H)、脳組織 (B)、および肝臓組織 (L) を10分間または30分間クロスリンクしました (左パネル)。調製したクロマチンをソニケーション処理し、精製したDNAを1%アガロースゲルで電気泳動して分離しました。ChIP-qPCRアッセイ (中央と右パネル) では、RING1B (D22F2) XP Rabbit Monoclonal Antibody #5694、あるいはSUZ12 (D39F6) Rabbit Monoclonal Antibody #3737のいずれかを用いてクロマチン免疫沈降を実施しました。濃縮したDNAは、SimpleChIP® Mouse HoxD10 Exon 1 Primers #7429、SimpleChIP® Mouse HoxA1 Promoter Primers #7341、およびSimpleChIP® Mouse GAPDH Intron 2 Primers #8986を用いて、リアルタイムPCRにより定量化しました。ネガティブコントロールのGAPDHのシグナルを1とした場合の相対値として、各サンプルのシグナルを示しています。

Appendix C:クロマチンの断片化の最適化

クロスリンククロマチンDNAの断片化についての最適条件は、細胞数、サンプル量、ソニケーション時間、使用するソニケーターパワーの設定により大きく異なります。各ソニケーションサンプルには、ChIP Sonication Nuclear Lysis Buffer 1 mLあたり、100-150 mgの組織または1 x 107-2 x 107個の細胞を使用することを推奨します。ご使用になる組織や細胞タイプに最適なソニケーション条件を決定するためのプロトコールを以下に示します。

  1. セクションI、II、IIIに従い、100-150 mgの組織または1 x 107-2 x 107個の細胞を用いてクロスリンクした細胞核を調製してください。セクションIIIのステップ4を行った後、下記に進んでください。
  2. ソニケーションによるクロマチンの断片化:最適なソニケーション条件は、ソニケーターごとに異なり、出力設定に応じてソニケーションの回数と持続時間を調節する必要があります (Branson Digital Sonifier 250 probe sonicatorの推奨出力設定については、セクションIIIのステップ5を参照してください)。最適なソニケーション条件を決定するには、ソニケーションのタイムコースを設定し、一定の回数または時間ソニケーションした後、50 µLのクロマチンサンプルを採取してください。例えば、ソニケーション処理をしながら、1-2分おきにクロマチンサンプルを採取してください。
  3. 21,000 x gで10分間、4°Cで遠心分離し、クロマチンサンプルを清澄化してください。
  4. 上清を新しい微量遠心分離用チューブに移し、Nuclease-free water 100 µL、5 M NaCl #7010 6 µL、RNase A #7013 2 µLを加えてください。ボルテックスで混合し、37°Cで30分間インキュベートしてください。
  5. RNase Aで処理した各サンプルに、Proteinase K #10012 2 µLを加えてください。ボルテックスで混合し、65°Cで2時間インキュベートしてください。
  6. 各サンプルから20 µLを取り出し、DNA断片のサイズを調べてください。
  7. 最適なDNA断片サイズが得られるソニケーション条件を選択して、セクションIIIのステップ5のクロマチン調製に用いてください。最適なソニケーション条件が得られない場合は、ソニケーターの出力設定を増減してソニケーションの処理時間の検討を繰り返してください。

注意:最適なソニケーション条件は、サンプルの種類や固定時間によって異なります。推奨されるサイズのクロマチン断片を得るために必要な、最小回数のソニケーションを行うようにしてください。長さが500 bp未満のDNA断片が全体の80%を超えるような過剰なソニケーションを行うと、クロマチンに過度のダメージを与え、免疫沈降の効率が低下する恐れがあります (図8、右パネルを参照してください)。

  • 10分間固定した細胞の場合、最適なソニケーション条件下では、DNA断片全体の約90%が1 kb未満のスメア状のバンドとして観察されます (図8、左パネルを参照してください)。固定時間を30分に延長すると、断片化が制限され、1 kb未満のスメア状のバンドとして観察されるDNA断片は約60%となります。
  • 10分間固定した組織の場合、最適なソニケーション条件下では、DNA断片全体の約60%が1 kb未満のスメア状のバンドとして観察されます。固定時間を30分に延長すると、断片化の効率が低下し、1 kb未満のスメア状のバンドとして観察されるDNA断片は約30%となります (図7、左のパネルを参照してください)。
FIGURE 8. Chromatin immunoprecipitations were performed with 2 x 10^7 HCT 116 cells

図8. HCT 116細胞を10分間クロスリンクし、チャートに示す各時間でソニケーション処理を実施しました (左パネル)。DNAをSimpleChIP® Plus Sonication Chromatin IP Kit #56383のセクションIV記載の方法で精製し、精製したDNA 20 µLを1%アガロースゲルの電気泳動で解析しました。ソニケーションサイクルを増やすと、クロマチン断片のサイズが小さくなりました (左パネル)。クロマチン免疫沈降は、SimpleChIP® Plus Sonication Chromatin IP Kit #56383を使用し、Non-phospho (Active) β-Catenin (Ser33/37/Thr41) (D13A1) Rabbit Monoclonal Antibody #8814、TCF4/TCF7L2 (C48H11) Rabbit Monoclonal Antibody #2569、またはNormal Rabbit IgG #2729 のいずれかを用いて実施しました。SimpleChIP® Human CaMK2D Intron 3 Primers #5111およびSimpleChIP® Human α Satellite Repeat Primers #4486を用いたリアルタイムPCRにより、濃縮DNAの定量化を行いました。各サンプルにおける免疫沈降されたDNA量は、インプットクロマチンの総量を1とした場合の相対値として表示しています (100%に相当、右パネル)。Branson Digital Sonifier D250 probe sonicatorを1/8-inch Micro Tipと共に用いた場合、4分間のソニケーション処理が最適条件でした。過剰なソニケーション処理によって、コファクターのβ-カテニンと転写因子のTCF4/TCF7L2に対する抗体を用いたクロマチンの濃縮効率が著しく低下しました。

Appendix D:トラブルシューティングガイド

クロスリンク時間を10-30分の範囲内で短縮してください。 ソニケーション1回ごとの細胞/組織の量を減らしてください。ソニケーションのタイムコース実験を行ってください。
問題 考えられる原因 推奨される対処法
1. 断片化クロマチンの濃度が低すぎる。

細胞/核の溶解が不完全である。

クロマチン調製に十分な細胞数を使用していない。

クロマチン調整液のDNA濃度が50 µg/mLに近い場合、免疫沈降1回につき少なくとも5 µgとなるようにさらにクロマチンを追加して、プロトコールに従って実験を続けてください。

クロスリンクの前に、別途用意したプレートで細胞数を数え、正確な細胞数を測定してください。

2. クロマチンの断片化が不十分で、DNA断片が大きすぎる (>50% 1.5 kb以上)。

細胞のクロスリンクが過剰。

処理する細胞/組織量が多すぎる。

クロスリンク時間を10-30分の範囲内で短縮してください。 ソニケーション1回ごとの細胞/組織の量を減らしてください。ソニケーションのタイムコース実験を行ってください。

3. クロマチンの断片化が進行しすぎている (>90% 300 bp未満)。

ソニケーション処理条件が厳しすぎる。

ソニケーションのタイムコース実験を行い、適切な断片サイズを得るための最低限の処理時間を確認してください。

4. インプットDNAのPCR反応で産物が得られない、または得られる量が非常に少ない。

PCR反応に使用したDNA量が十分でない、またはPCR条件が最適でない。

PCRの増幅領域が、ヌクレオソームフリー領域に及んでいる。

IPに加えたクロマチン量が十分でない、またはソニケーション処理が過剰。

PCR反応に、より多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。

クロスリンクおよびソニケートしたクロマチンから精製したDNAを用いて、実験用プライマーセットのPCR条件を最適化してください。 最適なChIPの結果を得るには、1回のIPあたり5-10 µgのクロマチンを加えてください。上記1と3の対応策も参照してください。

5. ポジティブコントロールであるHistone H3抗体の免疫沈降サンプルとRPL30プライマーを用いたPCR反応で増幅が起こらない。

免疫沈降に加えたクロマチンまたは抗体が十分でない、または免疫沈降のインキュベーション時間が短すぎる。

Protein Gビーズからのクロマチンの溶出が不十分。

各免疫沈降反応にクロマチン5-10 µgと抗体10 µLを加えたことを確認して一晩インキュベートし、Protein Gビーズを加えてさらに2時間インキュベートしてください。

Protein Gビーズからのクロマチンの溶出には65°Cが最適です。頻繁に撹拌して、ビーズを懸濁状態に保ってください。

6. ネガティブコントロールのRabbit IgGの免疫沈降産物と、ポジティブコントロールのHistone H3抗体の免疫沈降産物で、PCRでの増幅が同程度になる。

免疫沈降に使用したクロマチン量が過剰、または十分でない。あるいは、免疫沈降に抗体を加えすぎている。

PCR反応に加えたDNAが多すぎる、またはサイクル数が多すぎる。

各免疫沈降反応に対して加える量は、クロマチン15 µgおよびHistone H3 Antibody 10 µLを上限としてください。Normal Rabbit IgG量を、免疫沈降1回につき1 µLまで減らしてください。

PCR反応に加えるDNAを減らすか、PCRのサイクル数を減らしてください。PCRの線形増幅領域内でPCR産物を解析することが非常に重要です。そうしなければ、増幅前のDNA量の差が正確に測定できません。

7. 実験抗体のIP産物のPCR反応で結果が得られない。

PCR反応に加えたDNA量が十分でない。

免疫沈降に使用した抗体量が十分でない。

免疫沈降では機能しない抗体を使用。

PCR反応に、より多くのDNAを使用するか、サイクル数を増加させてください。

通常は免疫沈降反応液に1-5 µgの抗体を加えますが、実際に必要な量は抗体によって大きく異なります。

免疫沈降反応液に加える抗体の量を増やしてください。別の抗体を検討してください。

作成日:2017年3月

改訂日:2022年4月